エッセイ

今日のおさんぽ。すてきな本との出会いと、タピオカが飲みたかったおじいちゃん。

「そういえば、わたし、4日間家から出てないな」

ふと思った本日の午後。どうにも体がむずむずする。わたしの仕事机はびたっと壁にくっついていて、近くには窓もない。4日間、壁に向かってかちゃかちゃとキーボードを叩いていたことになる。

風がふんわり部屋に入ってきてくれるとか、遠くで海の音が聞こえるとか、気持ちが明るくなることがあればいいんだけれど。目の前には、壁。なんならちょっと汚れている。

外の空気が吸いたい。そういえば、今日が暑いのか寒いのかもわからない。雨が降っている音が最近は多かったように思うけど、実際のところは知らない。家の中に雨は降らないから。

「さんぽに行こう」

キリのいいところで仕事を切り上げて、メイク用品を広げる。すっぴんでは家から出ない。美意識とかではなくて、サラリーマンがネクタイを締めると気合が入るみたいに、化粧をすると「よし!出かけるか!」とやる気が出るのだ。

せっかく化粧したんだから、外に出ないともったいないと思うからかもしれない。もったいない精神は、こんなところでも活きてくる。

 

プーマのスニーカーを履いて、外に出る。家の中は肌寒く感じたけれど、外に出て驚いた。

夏じゃん。え、こんなにあったかいんだ!私が知らない間に季節は進んでいたらしい。ぽかぽかした日差しを浴びて、なんだか体も元気になってくる。

気分がいいので、さらに気分がよくなる曲を聞いてみた。イヤホンから流れてくるのは西野カナちゃん。かわいいよね。『パッ』はね、いいよ。元気になるから。「おーべいべーべいべーうーうー」に合わせて腕をぶんぶん振って、大股で歩く。

途中できれいなお花を見つけて、Twitterにアップしてみる。iPhone10の画質はすごい。写真が下手なわたしでも、それなりに見える。カメラマンにもなれる気がする。ごめんそれはうそ。

Twitterでのおさんぽ報告が楽しくて、たくさん写真を投稿してみた。フォロワーさんがリアルタイムで反応してくれて、なんだか一緒に歩いているような気分になった。たのしい。

たまには、SNSと一緒におさんぽするのも悪くないかもしれない。たまにね。

 

1時間ほど歩いて、そろそろ帰ろうかなと思ったけれど、なんだかお腹が空いてきた。途中で食べたワッフルでは足りないみたい。早めの夜ごはんにしようかなぁと思いながら、とりあえず目の前にあった本屋さんに入ってみた。

そこで出会った本にびびび!ときて、即決購入。すぐに読みたくなったので、隣にある喫茶店にお邪魔することにした。今夜のディナーはこの喫茶店でいただくことにする。

たまーに来る喫茶店で、愛想がよすぎない定員さんと、マナーのいい常連さんが作る空気感が心地いい。今日のBGMはいきものがかりのオルゴールバージョンだった。センスがいい。

本日の登場人物はこちら!

左側にはたばこの煙をぷかぷか吐き出しているマイルドヤンキー。右側にはパソコンと睨めっこで難しい顔をしているサラリーマン。斜め左には新聞を読む紳士。途中参加で斜め右に座ったのは、つなぎ姿で休憩中風味のお兄さん。

この喫茶店、いまでは珍しい喫煙可。ちなみに私は元喫煙者で、禁煙したいまでもたばこの煙は嫌いじゃないので、隣でマイルドヤンキーがすぱすぱ吸っていてもオールオーケー。

ちなみに、このマイルドヤンキー、とても行儀がよかった。店員さんの「砂糖はいる?」の質問に「いえ、結構です」と返し、お会計のときはしっかり「ごちそうさまでした」と言っていた。このマイルドヤンキー、できる。だてに髪を逆立てて、だぼだぼのジャージを着ているわけじゃない。

 

喫茶店ではやっぱりナポリタンだろう!と思って、店員さんにいそいそとメニューを注文した。ら、なんと「今日はパスタ終わっちゃったんです~」ときた。そんなぁ!まじかよ…ナポリタンがない喫茶店なんて…。

「いまなら、ルーローハンがありますよ」

よくわからなかったけど、お米に豚肉が乗っている台湾のごはんらしい。にく、食べたい。注文してみた。

うまかった。パスタが品切れになっていなければ、食べられなかったルーローハン。ありがとう品切れパスタ。よくわからない味のスパイスが効いててぱくぱく食べられた。

食べている途中、横のサラリーマンが頭をぐしゃっとさせてパソコンを睨んでいた。なにかのハウツー本も開いていたから、新しいことを勉強中なのかもしれない。がんばれーと心の中で思いながら、私はルーローハンを食べ続けた。うまいぜ。

 

そして、本屋さんでびびび!ときた本はこちら。

『麦本三歩の好きなもの(むぎもとさんぽのすきなもの)』住野よる

おさんぽのあとに、『むぎもとさんぽのすきなもの』を読む。本屋さんで見つけた瞬間に「これだ!」と思って即買いしちゃった。しかも、わたしの目の高さに表紙が見えるように置いてあって、これはもう、運命…。

図書館で働くさんぽちゃんの日常を綴った物語なんだけれど、難しくなく、悲しくもなく、途中ふふっと笑えるところもあり、おさんぽをした日に読むにはぴったりの本だった。気負わず、自分の中のほっこりとした気持ちを残したまま、するすると読み進めることができた。

無意味と大切じゃないは一緒じゃない。そして、無意味は意味の引き立て役でもない。無意味な日常があるから、意味ある日が大切に思える、とかじゃない。無意味な日々も、意味ある瞬間もどっちも大切で、それが一番いいということなんだとのんきに思う。

麦本三歩の好きなもの(10Pより引用)

この文章に、「わ、わかるー!」と思える人は、合ってます。『麦本三歩の好きなもの』。ぜひこの機会に読んでみてくださいな。

 

おさんぽの途中でワッフルを食べたせいで、ルーローハンを食べ終わるころにはお腹がぱんぱんになっていた。ぷひぃ、苦しい。

食後の紅茶でお腹を落ち着かせながら、本をゆっくりと読んでいたら、カランコロンと杖の付いたおじいちゃんが入ってきた。店員さんがそそそと近づいてきて、一言。

「ごめんねぇ、今日、タピオカ終わっちゃってるの」

ここの喫茶店では、最近タピオカミルクティーを始めたのだ。この前飲んでみたら、タピオカがもちもちでとてもおいしかった。どうやら、このおじいちゃんはタピオカがお目当てらしい。かわいい。

「えぇ?なんだぁ、ないの、タピオカ」

女子高生だけじゃなく、おじいちゃんまで虜にするタピオカ。さすがである。タピオカ品切れか、おじいちゃん残念だな。でも紅茶もおいしいよ、と思っていたら。

「タピオカないなら、今日はいいや。いらない」

いらない、そう言い残して、おじいちゃんは杖を付きながら店を出ていった。か、帰っちゃうんだ…。それほどまでにタピオカを求めていたおじいちゃん。次は飲めるといいね。

お腹も満足したので、本の残りは家で読むことにして、おじいちゃんに続いて私も帰る。お腹いっぱいなのに、なんだか甘いものが食べたくなってきて、コンビニでアイスを買った。これで今日は完璧な日だ。

 

家に帰って、ソファでアイスを食べていると、しみじみ今日は楽しかったなぁと思う。外にいたのは2時間くらいだったけれど、その2時間で、小旅行くらいの満足感がある。

ぽかぽかの日差しも気持ちよく、すてきな本との出会いもあった。ナポリタンがないおかげで、始めてルーローハンを食べられた。おいしかった。食後のアイスも、最高でした。アイスキャンデー、メロンミルク味。

体がむずむずし始めたら、また行きたいな。おさんぽに。